前回からの続きです。
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サンプルプロジェクトの説明
このページ(TOPPERS/ASPのビルドからデバッグまで~サンプルプロジェクトで遊ぼう)を参照してください。
Arduino Mega2560版カーネルについて
以下、このカーネルにおける備考です。
●ArduinoIDEやライブラリは使用不可
このカーネルを使った時点で、ArduinoはArduinoでなくなります。
当然、便利なArduinoIDEや、それに付随する豊富なライブラリは使用できなくなります。
但し、「ATMega2560」チップのペリフェラル用のデバイスドライバなどは「Microchip Studio」導入時にサンプルプログラムのインストールを選択していれば、豊富なサンプルコードが手に入るはずです。
少々手間ですが、これらをカーネル上で動くように移植することは難しくないと思います。
また、TOPPERS/ASPカーネルで動作しながらArduinoのライブラリを使えるような「TOPPERS/R2CA」(凄い!)という実装も存在します。
この場合はターゲットが「Arduino Mega2560」ではなく、ARMコアの「Arduino M0」になりますが、極めて有意義な実装です。
●割り込み優先度の設定不可
このカーネルでは、割り込み優先度の設定はできません。
コンフィグレーションファイルなどにおいて、他のアーキテクチャからの移植性を考慮して、-1(優先度最低)から-6(優先度最高)を設定してもエラーが起きないようになっていますが、実際の動作に反映しません。
これは「ATMega2560」チップに搭載されている割り込みコントローラーがシンプルな設計であり、割り込み優先度を変更する機能が存在しないためです。
「ATMega2560」チップにおける割り込み優先度は、割り込み番号が若いほど優先度が高くなるように固定されています。
●多重割り込みには未対応
デフォルトでは、割り込みハンドラやタスクコンテキスト以外のプログラムのための(非タスクコンテキスト用)スタック領域は、0x200(512バイト)としています。
これは「..\target\arduino_mega2560_gcc\target_config.h」の以下の箇所で「DEFAULT_ISTKSZ」という名前で定義されています。
- /*
- * デフォルトの非タスクコンテキスト用のスタック領域の定義
- */
- #define DEFAULT_ISTKSZ 0x200U
- #define DEFAULT_ISTK (void *)(0x00002200U - DEFAULT_ISTKSZ - 1)
このスタックサイズは、Arduino Mega2560に搭載されている「ATMega2560」チップのRAMのサイズがわずか8KBであることを考えれば、妥当と考えています。
しかし、これにより多重割り込みのサポートを諦めています。
0x200(512バイト)というスタックサイズでは、割り込みをネストするのには十分ではなく、あっという間に暴走してしまう危険性が高くなりますので、そのリスクを避けました。
もっとも、多重割り込みが必要なほどの処理がシビアなアプリケーションには、このターゲットは使われないだろうと判断した結果です。
●例外ハンドラは未対応
コンフィグレーションファイルなどにおいて、他のアーキテクチャからの移植性を考慮して、例外ハンドラの作成はできるようになっているものの動作はしません。
理由は「ATMega2560」チップに例外処理が存在しないためです。
●一部サービスコールは未対応
割り込みIDを指定して、これを有効/無効化するための「ena_int()」と「dis_int()」サービスコールはサポートしていません。
これは「ATMega2560」チップに搭載されている割り込みコントローラーがシンプルな設計であり、割り込み要因ごとに有効/無効化するためのフラグを設けていないためです。
どうしても一時的に割り込みを有効/無効化したい場合は、各ペリフェラルのレジスタを設定するか、CPU全体の割り込みを一括で設定しても良いのであれば、以下のような処理で代用してください。
- /* すべての割込みの許可 */
- Asm("sei");
- /* すべての割込みの禁止 */
- Asm("cli");
また、性能評価用システム時刻取得のための「get_utm()」サービスコールは未実装です。
参考資料
Arduino Mega2560に搭載されている「ATMega2560」チップに関する詳細な情報は、メーカーであるMicrochip社のWebページはもちろんのこと、「AVR日本語情報サイト」をご覧頂くことをお勧めします。
特に後者のページは、ディスパッチャやデバイスドライバの実装の際に大変にお世話になりました。
こんな場で恐縮ですが、心より感謝を申し上げたい。
ありがとうございました!
このページは、日本におけるAVRマイコンのシェアを大きく伸ばしたものと思います。
但し、条項が厳しいため(相当イヤな目に遭ったみたい…)、こちらのサイトへの直接リンクを張ることはできませんので、お手数ですが検索してお読みください。
ライセンスについて
このカーネルは「TOPPERSライセンス」で配布しております。
無償ですが、使用に関しては自己責任です。
まず居ないとは思いますが…万が一、このカーネルを商用利用するような無茶をやる場合は、このリンク先の条項に従ってください。
あと、その場合は必須ではありませんが、当方に連絡いただければ、ちゃんとソースコード見直します。
…怖いから!
<終わり>
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