私はMacユーザーです。
しかし、会社ではWindowsパソコンを使って仕事をしています。
でも、家のパソコンは代々Macです。
プログラマーという職業柄、家に帰ってまでパソコンの画面なんか見たくはありません。
とはいえネットやメールなど、今やパソコン無しでは普段の生活にも支障をきたす時代。
そこで妥協点として、プライベートでは仕事を連想してしまう無骨なWindowsパソコンではなく、見目麗しいMacを使うことにしたのが切っ掛けだったと思います。
(まあ、今や家にパソコンが無くたってAndroidのタブレット一台でもあれば事足りるんですけどね…)
今回は、手持ちの歴代Macの中でも、異様な一台を紹介します。
「PowerBook 2400c/180」です!
詳しくは、こちらのページを参照してください。
発売は、なんと1997年!?20世紀のパソコンです。
でも、私の機体はそんな古さを感じさせないほどキレイですよね?
この時代のMacのロゴは「レインボーロゴ」と呼ばれる七色のリンゴ。
この機種には(小さいですが…)天板にも配置されています。
今のMacのノートPCとは逆に、天板を開いた状態では、このレインボーロゴは「逆さリンゴ」になってしまうのですが、ここはご愛嬌!
インターフェースを見ていきましょう。
背面には、左からマウスなどを繋げるADB、電源、モデム、FDドライブ、外部モニタ、SCSIといった各種ポートが並びます。
右側には、赤外線通信ポートと、PCカードスロットが配置されています。
え…USB?
そんなものは知らない…。
右側面にはサウンド入出力のジャックが配置されています。
この「PowerBook 2400c/180」は、「サブノートPC」というカテゴリーの製品です。
筐体そのもののサイズは非常に小さい(しかし、今の基準では分厚い…)のですが、キーボードはしっかりしており、適度なサイズとストロークを確保しています。
トラックパッドの下には。カイゼル髭のようなボタンがあります。
Macらしく1ボタンです。
さて、所々で時代を感じさせる本機ですが、ご覧の通りパッと見、新品のような状態です。
これには訳があります。
実は、この機体は私が新品で購入したものではないのです。
正確な時期は忘れましたが、今から十数年前にジャンク屋で転がっていたものを格安で購入したものなのです。
この機体の発売が1997年ですので、その当時でも相当な旧型だったわけですが、私は以前から、この機体の数奇な生まれに不思議な魅力を感じていました。
それに関しては後述。
そのジャンク品は見た目はボロボロで、動作保証無し!
同系統のデザインのフロッピードライブも付いていましたが、こちらは蓋が破損!
(未だに動作自体は正常です。)
ダメ元で家に持ち帰り電源を入れたところ、本体は案の定うんともすんとも言わず…。
まずは電源回路を疑いました。
分解して地道にテスターを当てて故障箇所を探します。
一般的に、こういった精密機械において電源入れても何も反応がない…という症状は、軽症であることが多いです。
(因みに一番厄介なのは、通電して動いてはいるが不安定というケース。)
調べていくと、やはりそうか!
経年劣化か衝撃でチップヒューズが切れているだけだったのです。
そこで、電源回路にある全てのチップヒューズをポリスイッチに交換しました。
それだけで、あっさりと起動成功!
せっかく復活したのだから、とことん改造しよう!…ということで、IDE規格のハードディスクを取り出して、IDE/コンパクトフラッシュ変換アダプタを使用してコンパクトフラッシュをハードディスクとして使用することにしました。
今で言うところのSSDへ交換したみたいな感じですね。
その後、この「PowerBook 2400c/180」を売っていたジャンク屋で「PowerBook 2400c」の新品未開封のプラスチック筐体を見つけ、これに交換しました。
このプラスチック筐体、「PowerBook 2400c」本体のジャンクの5倍ほどの値段がしましたよ~。
今考えると…嵌められた!?
まあいいけど。
…このような経緯から、不自然なほどのキレイな見た目となっているのです。
さて、華麗なる復活を果たした「PowerBook 2400c/180」は、その後しばらく家のパソコンとして活躍をしてくれました。
しかしながら時代の流れには逆らえず、ここ数年はほとんど通電させていませんでした。
そこで、ブログのネタに丁度よいと思って本日押し入れから引っ張り出してきました。
さてさて起動するかな~?
電源プラグを差し込んだ瞬間に「ジャ~ン」というCコードがあっさりと聞こえてきました。
液晶は相当暗いものの「Mac OS 9.1」のロゴを表示!
イケるか~!?
頑張れ!!
よし!デスクトップまで行きました!!
やはりハードディスクじゃなくて、コンパクトフラッシュなどでシリコン化すると経年劣化には強いですね。
起動時間も倍以上早くなっていると思います。
あとは、ハードディスクと比べて消費電力も少ないし、モーターの始動時の突入もありません。
だから電源回路にも優しいでしょう。
これは良い改造だったかなぁ~と。
アプリケーションは「Microsoft Office」などが入っていますね。
2chブラウザーなんかもある。
生活感を感じますね。
さて、散々「異様」であるとか「数奇」などと称してきた「PowerBook 2400c/180」ですが、その魅力とは一体何なのか?
すでに題名で言ってしまってますが、これは当時のAppleがIBMへ開発を委託して完成した製品なのです。
パソコンに詳しい人にとっては、これは異様と感じざるを得ません。
歴史を紐解けば、インテルのCPUを載せた「IBM PC」とモトローラのCPUを載せた「Macintosh」は、長い期間対立関係にありました。
また当時のノートPC市場において、IBMの「ThinkPad」シリーズとAppleの「PowerBook」シリーズは、お互い強力なブランドとして確立されており、動作するOSこそ違えど苛烈なライバル関係にありました。
一方で、この「PowerBook 2400c」が発売された頃は、パソコン市場からサーバー市場への転換を図ろうとしていたIBMが、Appleとモトローラと組んで「PowerPC」という新たなアーキテクチャのCPUを協力して開発していた時期にあたります。
実際、この「PowerBook 2400c」に搭載されているCPUもこの「PowerPC」の最初期のものです。
昨日の敵は今日の友…。
そうした混沌の時代に産み落とされた数奇なモデルが、この「PowerBook 2400c」なのです。
IBMが開発を担当したとは言っても、実際に設計を行ったのは当時の「日本IBM大和事業所」という会社です。
ここは「ThinkPad」などのモバイル系機器の設計・開発を強みとしていたIBMの日本法人でした。
故に、ここで開発された「PowerBook 2400c」が、どこか昔の「ThinkPad」と似た雰囲気を持っていることも無理からぬことです。
外見からでも分かりますが、実際に分解してみると、それまでのMacとは全く違う設計思想であることを強く感じました。
そのIBMも、いつしかパソコン市場から完全に撤退。
レノボという中華系企業が「ThinkPad」のブランドを引き継いだものの、やはりかつての輝きはなく…。
また「PowerBook 2400c」は、当時のAppleの最高経営責任者であったギル・アメリオにより日本に派遣された技術者チームが、東京の満員電車を体験して小型軽量マシンのきっかけを掴んだ…といった逸話がある通り、明確に日本市場にターゲットを向けた製品という点でもApple製品としては異例なモデルと言えます。
そのギル・アメリオも、この製品の発売とほぼ同時に復権した、かのスティーブ・ジョブズにAppleを追い出されることとなります。
その後のAppleの躍進は、皆さんの御存知の通り。
しかしながら、この「PowerBook 2400c」以降、明確に特定の国にターゲットを絞った製品は、Appleから出ていないような気がします。
特定の市場に合わせて製品を分けて開発を行うのは、経営的に非効率であるとスティーブ・ジョブズは考えたのでしょう。
ギリギリのタイミングでしたが「PowerBook 2400c」は、ギル・アメリオ体制だったから出せた製品とも言えますね。
このような、まるで業界の歴史の「紆余曲折」を捏ねて固めたような生い立ち。
それこそが「PowerBook 2400c」の最大の魅力だと思います。
先日の「モバイルギアII(MC/R330)」とは異なり、この「PowerBook 2400c」が活躍できる場面は、もはや無いでしょう。
プラスチック筐体は未だ新品同様ですが、液晶は保護膜(剥がせないやつ)が波打ち、バックライトの陰極管の輝度も落ちています。
それでも一番思い入れのあるMac、なにせゴミ同然のジャンクからここまで頑張ってキレイにしたのですから!
可能な限り動態保存を維持していきたいと思います。
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