2024年11月10日日曜日

「pcDuino3」でYocto Project その10

前回からの続きです。

このテーマを最初からご覧になる場合はこちらからどうぞ。


「core-image-sato」のビルド(完結編)

試行錯誤の末、前回までに「core-image-sato」のbitbakeまで漕ぎ付けました。

長いビルド時間をかけて、ようやく絵の出せるディストリビューションを完成させたと思いきや…。

出来上がったイメージをSDカードにコピーし「pcDuino3」に挿入、起動させましたが、以下の画面でフリーズという残酷な結果。

スプラッシュスクリーン


このスプラッシュスクリーンは「core-image-minimal」の時には出ていなかったので、全くダメというわけでもないのでしょうけど…。

何が悪いんだろう?

再びネット検索で調査します。

キーワードは「meta-sunxi」など、問題の有りそうなレイヤーやレシピの名前を使うと良いです。

すると、このページが引っかかりました。

これは、Chelさん(って言うのかな?)のブログで「pcDuino3」と同じくAllWinner製のプロセッサを搭載している「Cubieboard2」というボードで「Yocto Project」を使用した際の記録です。

このように、自分が使おうとしているボードと同じプロセッサの情報でも、案外良いヒントになったりします。

この情報を使わせていただきましょう。

Chelさん、ありがとうございます!


さて、このページの情報によると「core-image-sato」を動かすために更に必要な作業は、以下の通りです。


◯「local.conf」へ必要なパラメータの追記

◯「sunxi-mali_git.bb」の修正

◯「gstreamer1.0-plugins-base_%.bbappend」ファイルの作成


まずは「local.conf」へ必要なパラメータの追記からやってみましょう。

パスは、以下の通り。


/home/yocto/poky/build/conf/local.conf


最終的に、以下のように追記しました。

  • ...
  • #
  • # for pcDuino3
  • #
  • #CORE_IMAGE_EXTRA_INSTALL += "nodejs nodejs-npm openssh git"

  • PACKAGECONFIG:remove_pn-xserver-xorg = "glamor"
  • XSERVER:append = " xserver-xorg-extension-glx xf86-video-modesetting xf86-video-fbdev"
  • XSERVER:remove = "xf86-input-keyboard xf86-input-mouse"
  • IMAGE_FEATURES += "x11"
  • DISTRO_FEATURES:append = " opengl x11"
  • DISTRO_FEATURES:remove = "wayland"
  • MACHINEOVERRIDES .= ":use-mailine-graphics"
  • VOLATILE_LOG_DIR = "no"


この内「XSERVER:remove =」の行は、前回の修正。

「MACHINEOVERRIDES .=」の行は、こちらのREADMEを根拠に。

「VOLATILE_LOG_DIR =」の行は、こちらにある通り、「/var/log」以下のログを保存しておきたかったので追記しています。

これ以外は、ほぼChelさんの情報から必要と思われるものを抜粋しています。

追記が終わったら「local.conf」の保存をお忘れなく!


次に「sunxi-mali_git.bb」の修正です…ってこのファイル前回も修正しましたよね?

まだ足りないってか?

パスは、以下の通り。


/home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/libgles/sunxi-mali_git.bb


ここでは、ファイルの最後の方、一行だけ修正します。

わかりにくいかもしれませんが「RPROVIDES:${PN} +=」の行を「#」でコメントアウトして、その直下に新たに「RPROVIDES:${PN} =」の行を付け加えています。

  • ...
  • # Packages like xf86-video-fbturbo dlopen() libUMP.so, so we do need to ship the .so files in ${PN}
  • PACKAGES =+ "${PN}-test"

  • #RPROVIDES:${PN} += "libGLESv2.so libEGL.so libGLESv2.so libGLESv1_CM.so libMali.so"
  • RPROVIDES_${PN} = "libGLESv1_CM.so libGLESv2.so libEGL.so"
  • #RDEPENDS:${PN}-test = "${PN}"

  • FILES:${PN} += "${libdir}/lib*.so"
  • FILES:${PN}-dev = "${includedir} ${libdir}/pkgconfig/*"
  • FILES:${PN}-test = "${bindir}/sunximali-test"
  • ...


変数に「+=」 とした場合、元の変数の中身に加えて、これ以降に表記する要素を加えます。

対して「=」の場合は、元の変数の中身に関係なく、これ以降に表記する要素をそのまま代入します。

つまり、元の表記では余計なものが「RPROVIDES」変数に加えられてしまうのでしょう。

修正が終わったら「sunxi-mali_git.bb」の保存をお忘れなく!


最後に「gstreamer1.0-plugins-base_%.bbappend」ファイルの作成です。

この長ったらしい名前のファイル、以下のディレクトリに作成します。


/home/yocto/poky/meta-sunxi/meta-sunxi/recipes-multimedia/gstreamer/

ファイル・ブラウザ - 1


この「gstreamer1.0-plugins-base_%.bbappend」ファイルの中身は、以下のように表記します。

  • RDEPENDS_libgstgl-1.0 += "sunxi-mali"
  • RDEPENDS_${PN}-opengl += "sunxi-mali"


これまでの経験からレシピ・ファイルの拡張子は「.bb」であることがお分かりでしょう。

今回の「.bbappend」ファイルというのは、同名のレシピ・ファイル「.bb」の後にbitbakeにより解析され、同名のレシピ・ファイル「.bb」の中で行われた内容を変更したり、補完したりするものです。

例えば、どこかのレイヤーに「hogehoe.bb」というレシピがあって、その中で「HOGEHOGE = "fuga"」とあるとします。

このとき、どこかのレイヤーに「hogehoe.bbappend」というファイルがあって、その中で「HOGEHOGE = "piyo"」とあった場合、最終的に「HOGEHOGE 」変数は「"piyo"」となります。

一方、「hogehoe.bb」というレシピがあったとしても、その中で「HOGEHOGE 」変数の操作が行われていない場合を考えてみましょう。

このケースでは「hogehoe.bbappend」というファイルがあって、その中で「HOGEHOGE = "piyo"」とあった場合は、この内容で「HOGEHOGE 」変数が定義されることになります。

この「.bbappend」ファイルというのは、元のレシピ・ファイルを不用意に変更したり、汚さないようにするために多様されます。

今回の場合「gstreamer1.0-plugins-base_x.xx.x.bb」は、恐れ多くも「Yocto Project」の根幹であり、最上位のレイヤーである「meta」に属するレシピです。


/home/yocto/poky/meta/recipes-multimedia/gstreamer/gstreamer1.0-plugins-base_1.22.6.bb


サードパーティとしては、自分の都合でこれを書き換えてもらえるはずもない(ボードやベンダーごとにそんなことやってたら収集が付かなくなる)ので、このような変更方法を採ります。

また「gstreamer1.0-plugins-base_%.bbappend」の「%」は、ワイルドカードです。

レシピ・ファイルは、名前の後にリビジョン番号が付くことがあります。

つまり今回の場合は、全てのリビジョンの「gstreamer1.0-plugins-base」に適応される「.bbappend」ファイルという意味になります。


さて、これで修正作業は完了。

以下のコマンドで「core-image-sato」をbitbakeします!

うぉりゃ、行け~ぃ!!


$ bitbake core-image-sato

ターミナル - 1


今回はそんなに時間はかからないはず!

というわけでbitbake無事終了!!

ターミナル - 2


以下のディレクトリを確認すると…


/home/yocto/poky/build/tmp/deploy/images/pcduino3/


ちゃんと「core-image-sato-pcduino3.wic.gz」というのが出来ていますね!

ファイル・ブラウザ - 2


こちらの記事を参考にSDカードを作成して「pcDuino3」を起動させましょう。

簡単におさらいすると…。

まずは、以下のコマンドで圧縮されている「core-image-sato-pcduino3.wic.gz」を解凍。


$gunzip -k -f ./tmp/deploy/images/pcduino3/core-image-sato-pcduino3.wic.gz

ターミナル - 3


以下のディレクトリで解凍された「core-image-sato-pcduino3.wic」を確認してください。


/home/yocto/poky/build/tmp/deploy/images/pcduino3/

ファイル・ブラウザ - 3

ここでパソコンにSDカードを挿入して、以下のコマンドでUbuntuに何処に認識されたかを確認します。


$ df

ターミナル - 4

今回の場合「/dev/sdb1」が「/media/yocto/boot」、「/dev/sdb2」が「/media/yocto/c748ecdf-46b6-4795-82ca-bb519c856946」として認識されていますね。

これは、私の環境の場合ですので、みなさん各自必ず確認してください。

SDカードにOSのイメージを書き込む前に、これらをアンマウントする必要があります。

今回の場合は、そのコマンドは以下の通りです。


$ sudo umount /media/yocto/boot

$ sudo umount /media/yocto/c748ecdf-46b6-4795-82ca-bb519c856946

ターミナル - 5

SDカードへアクセスするための権限を付与します。

今回の場合、SDカードは「sdb」と認識されていたので、以下の通り。

b」の部分は環境によって異なる可能性がありますので注意。


$ sudo chmod 666 /dev/sdb

ターミナル - 6

いよいよ以下のコマンでOSイメージの書き込みです。


$ oe-run-native bmap-tools-native bmaptool copy ./tmp/deploy/images/pcduino3/core-image-sato-pcduino3.wic /dev/sdb

ターミナル - 7


書き込みが終了したら、SDカードを正しくパソコンから取り出し「pcDuino3」に挿入して、電源投入です!

今度は、上手くいくはず!!

冒頭のスプラッシュスクリーンでフリーズすることなく、無事に起動…、いや、でもヤケに地味な画面ですな!

これが佐藤さん?

操作にはマウスが使えますので「pcDuino3」に挿入しましょう。

SATO - 1


デスクトップと思われる画面には、いくつかのアイコンが…。

「Media Player」っていうのは、ちょっと気になる。

SATO - 2


これだけしか無いの?

苦労したのに、淋しいねぇ。

SATO - 3


おっと、右上に何かリンクっぽいものが?

これをクリックすると…。

SATO - 4


おお!ゲームと思しきアプリのアイコンが沢山現れました!!

SATO - 5


ちょっと遊んでみようかな…。

これは、アレだ…パネルをずらしていって、1から15まで並べるヤツ。

「Fiteen」っていうのか~?

SATO - 6


お馴染みのマインスイーパー「Mines」。

SATO - 7


こちらもお馴染み、さめがめ。

…一瞬、何だか分からなかった。

「Samegame」です。

SATO - 8


数独もありました!

これは時間の経つのを忘れちゃう系。

SATO - 9


その他にも、遊び方が分からないものも含めて多くのゲームが入っていました。

すべて単純なものではありますが、デモンストレーションとしては親しみやすいですね。


さて、これで無事に絵の出るディストリビューション「core-image-sato」を「pcDuino3」上で動かすことができました。

これまで御覧頂いた通り「Yocto Project」でのディストリビューション作成は、相当に難易度が高いです。

マスターしようとしても、特に初期の段階では成長曲線の上がりは鈍いです。

しかしながら、bitbake中に起こるエラーには一定のパターンがあり、過去のエラーの内容と回避方法を覚えておけば、次に同じ問題に遭遇したときに応用が効くため、その後の作業は楽になっていきます。

また、今回のように自分の力だけではどうにもならない場合は、必要な情報をネットで検索するためのコツを掴むことによって、問題解決へと繋げることもできます。

そこに行き着くまでの道のりが長いことが課題と言えます。

しかしながら、NXPにせよ、TIにせよ、Renesasにせよ、STMicroもそうだったかな?

アプリケーションプロセッサのベンダーは、自社のプロセッサを搭載した評価ボードをリリースしており、そのためのレイヤーやレシピを提供しています。

つまり、これらをリファレンスとして利用する製品開発のためには「Yocto Project」を使用することが前提となっているのです。

組み込みエンジニアとして働いていれば、いつ「Yocto Project」を使用しなければならない案件が飛び込んでくるとも限りません。

事前に、今回の「pcDuino」や、メジャーどころの「Raspberry Pi」などで「Yocto Project」に慣れておいて損はないはずです。


Yocto関連の記事は、今回で終了です。

長々とお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

今後は「Raspberry Pi5」などで、もっと深いレベルで「Yocto Project」を使用する例などもトライしたいと思います。

…むしろ「pcDuino3」などのマイナーなボードよりも情報量が多いので、最初から「Raspberry Pi5」にしておけば…って、後の祭りです!!


<終わり>

2024年11月5日火曜日

「pcDuino3」でYocto Project その9

前回からの続きです。

このテーマを最初からご覧になる場合はこちらからどうぞ。


「core-image-sato」のビルド(試行錯誤編)

前回までにSSH、Git、そしてNode.jsが使用できる実用的なディストリビューションを作成しました。

しかし、これは「core-image-minimal」という最小限のディストリビューション・タイプにちょっとだけ肉付けをした程度のもの。

ご覧の通り「pcDuino3」にはHDMI端子があるのに、画面に映っているのはテキストだけ…。

pcDuino3


せっかくHDMI端子を持っているなら、当初の目的からは外れるけど、ちょっとグラフィカルな表示をさせてみたい!…という貧乏性的な発想から、何か絵を出せるディストリビューションを作ってみましょう。

今までは「Yocto Project」で用意されている最軽量のディストリビューション・タイプである「core-image-minimal」をベースに改造してきました。

グラフィカルなディストリビューションのためには、それの上位版「core-image-sato」というのをベースにするのが良さそうです。

ウ~ン「~sato」って何でしょうね?

どうやらGTKを使用したシンプルなデスクトップ環境のようです。

別に佐藤さんが作ったわけでもなさそうです。

というわけで、いつも通りUbuntuを起動してターミナルを開いて、以下のコマンドを打って今度は「core-image-minimal」の代わりに「core-image-sato」をbitbakeです。


$ cd poky/

$ source oe-init-build-env


その前に、前回いくつかのパッケージを書き加えた「./conf/」ディレクトリ以下にある「local.conf」の末尾の行「CORE_IMAGE_EXTRA_INSTALL += ~」の行を「#」でコメントアウトしておきましょう。

  • ...
  • # CONF_VERSION is increased each time build/conf/ changes incompatibly and is used to
  • # track the version of this file when it was generated. This can safely be ignored if
  • # this doesn't mean anything to you.
  • CONF_VERSION = "2"

  • #
  • # for pcDuino3
  • #
  • #CORE_IMAGE_EXTRA_INSTALL += "nodejs nodejs-npm openssh git"


今までと変わったことをやる場合は、前回の変更はクリアにしておいた方がいいです。

トラブル回避のために。

必要ならば、一度ビルドが通ってからまた書き加えましょう。


そして…


$ bitbake core-image-sato


…どやっ!?


ぐはっ!!

なんか、いきなりエラーが出ちゃった。

ターミナル - 1


面倒ですが、エラーをよく調べてみましょう。

これの意味は…「xf86-input-keyboard」は作れないけど「packagegroup-core-x11-xserver.bb」というレシピでこれが必要とされています…!?

  • NOTE: Resolving any missing task queue dependencies
  • ERROR: Nothing RPROVIDES 'xf86-input-keyboard' (but /home/yocto/poky/meta/recipes-graphics/packagegroups/packagegroup-core-x11-xserver.bb RDEPENDS on or otherwise requires it)
  • NOTE: Runtime target 'xf86-input-keyboard' is unbuildable, removing...
  • Missing or unbuildable dependency chain was: ['xf86-input-keyboard']
  • NOTE: Runtime target 'packagegroup-core-x11-xserver' is unbuildable, removing...
  • Missing or unbuildable dependency chain was: ['packagegroup-core-x11-xserver', 'xf86-input-keyboard']
  • NOTE: Runtime target 'packagegroup-core-x11-base' is unbuildable, removing...
  • Missing or unbuildable dependency chain was: ['packagegroup-core-x11-base', 'packagegroup-core-x11-xserver', 'xf86-input-keyboard']
  • ERROR: Required build target 'core-image-sato' has no buildable providers.
  • Missing or unbuildable dependency chain was: ['core-image-sato', 'packagegroup-core-x11-base', 'packagegroup-core-x11-xserver', 'xf86-input-keyboard']


なんのこっちゃ?

ちょっと「xf86-input-keyboard」というものについて調べる必要がありそうですね。

これは、X.Org Server(ウィンドウ・システム)で使用されるキーボードのドライバーだそうです。

さらに、こちらのページの一番上の投稿によると、この「xf86-input-keyboard」や「xf86-input-mouse」は非推奨であり、これらの機能は「xf86-input-evdev」などに置き換えられているとのこと。

このページは「Yocto Project」向けのものではありませんが、同じLinuxの情報ですから軽視はできません。


ひょっとして「xf86-input-keyboard」って、もう使われていないのでは?

それなのに呼び出しているので、これが原因では?


そういった推理から現在の「Yocto Project」のレイヤーから「xf86-input-keyboard」が定義されているレシピを探しましょう。

まずは「meta-sunxi」レイヤーを疑います。

以下のコマンドを入力。


$ cd ../meta-sunxi/

$ grep -r "xf86-input-keyboard" ./*


この結果「./conf/machine/include/sunxi.inc」というレシピの参照ファイル(.inc)に「xf86-input-keyboard」という文字列が見つかりました。

ターミナル - 2


このファイルを開いてみましょう。


/home/yocto/poky/meta-sunxi/conf/machine/include/sunxi.inc

ファイル・ブラウザ - 1

ファイルを見ると冒頭に「XSERVER = 」で始まる行が見つかります。

ここでは「XSERVER」という変数に「xf86-input-keyboard」を代入していることが分かります。

前述のページの投稿では「xf86-input-keyboard」や「xf86-input-mouse」は非推奨であり、これらの機能は「xf86-input-evdev」などに置き換えられ…とありましたね。

なのに、この行では「xf86-input-evdev」に加え、これに置き換えられたはずの「xf86-input-keyboard」や、さらには「xf86-input-mouse」まで加えられています。

  1. SOC_FAMILY ??= ""
  2. include conf/machine/include/soc-family.inc
  3. MACHINEOVERRIDES =. "sunxi:"
  4. # Sub-architecture support
  5. MACHINE_SOCARCH_SUFFIX ?= ""
  6. MACHINE_SOCARCH_SUFFIX_sun4i = "-sun4i"

  7. PREFERRED_PROVIDER_virtual/xserver = "xserver-xorg"
  8. XSERVER = "xserver-xorg \
  9.            xf86-input-evdev \
  10.            xf86-input-mouse \
  11.            xf86-input-keyboard"

  12. PREFERRED_PROVIDER_virtual/kernel ?= "linux-mainline"
  13. PREFERRED_VERSION_linux-mainline ?= "6.1.%"
  14. PREFERRED_PROVIDER_u-boot ?= "u-boot"
  15. PREFERRED_PROVIDER_virtual/bootloader ?= "u-boot"
  16. ...


これは臭いな~。

ならば、もう要らないと噂の「xf86-input-keyboard」と「xf86-input-mouse」を「XSERVER」変数から削除したいところですね。

これを行うには「local.conf」に記述を行うのが得策です。

(因みにこのファイルを直接修正しても結果は同じですが、お行儀の良い方法としてはコッチです。)

「local.conf」では「Yocto Project」で使用される様々なパラメータを変数単位で追加したり、変更したり、削除したりすることができます。

というわけなので「local.conf」の末尾に以下の記述を追加しましょう。

変数からアイテムを削除するには…


[変数名]:remove = "[削除するアイテム]"


…です。

つまり「XSERVER:remove = "xf86-input-keyboard xf86-input-mouse"」と追記すれば良さそうです。

  • ...
  • # CONF_VERSION is increased each time build/conf/ changes incompatibly and is used to
  • # track the version of this file when it was generated. This can safely be ignored if
  • # this doesn't mean anything to you.
  • CONF_VERSION = "2"
  • #
  • # for pcDuino3
  • #
  • #CORE_IMAGE_EXTRA_INSTALL += "nodejs nodejs-npm openssh git"

  • XSERVER:remove = "xf86-input-keyboard xf86-input-mouse"


これを保存して、再び「core-image-sato」のbitbakeにトライ!


$ cd build/

$ bitbake core-image-sato


あかん、また違ったエラーが出ちまったい…。

ウーン、この修正は上手く通ったようですが…。

ターミナル - 3

今回のエラーメッセージは、こんな感じ。

sunxi-mali_git.bb」というレシピのConfigure中でコケている模様。

  • ERROR: sunxi-mali-git-r0 do_configure: ExecutionError('/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/temp/run.do_configure.5903', 2, None, None)
  • ERROR: Logfile of failure stored in: /home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/temp/log.do_configure.5903
  • Log data follows:
  • | DEBUG: Executing python function extend_recipe_sysroot
  • | NOTE: Direct dependencies are ['/home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/libump/libump_git.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/xorg-xserver/libdri2_git.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-core/glibc/glibc_2.37.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-devtools/gcc/gcc-cross_12.3.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-devtools/gcc/gcc-runtime_12.3.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-devtools/quilt/quilt-native_0.67.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-graphics/drm/libdrm_2.4.115.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-graphics/xorg-lib/libx11_1.8.7.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-graphics/xorg-lib/libxau_1.0.11.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-graphics/xorg-lib/libxdmcp_1.1.4.bb:do_populate_sysroot', '/home/yocto/poky/meta/recipes-graphics/xorg-proto/xorgproto_2022.2.bb:do_populate_sysroot', 'virtual:native:/home/yocto/poky/meta/recipes-devtools/patch/patch_2.7.6.bb:do_populate_sysroot', 'virtual:native:/home/yocto/poky/meta/recipes-devtools/patchelf/patchelf_0.17.2.bb:do_populate_sysroot', 'virtual:native:/home/yocto/poky/meta/recipes-devtools/pseudo/pseudo_git.bb:do_populate_sysroot']
  • | NOTE: Installed into sysroot: []
  • | NOTE: Skipping as already exists in sysroot: ['libump', 'libdri2', 'glibc', 'gcc-cross-arm', 'gcc-runtime', 'quilt-native', 'libdrm', 'libx11', 'libxau', 'libxdmcp', 'xorgproto', 'patch-native', 'patchelf-native', 'pseudo-native', 'libtool-native', 'libpciaccess', 'libpthread-stubs', 'xtrans', 'util-macros', 'libxcb', 'attr-native', 'gnu-config-native', 'xz-native', 'binutils-cross-arm', 'zstd-native', 'libmpc-native', 'texinfo-dummy-native', 'linux-libc-headers', 'zlib-native', 'gmp-native', 'mpfr-native', 'flex-native', 'libxext', 'libxfixes', 'libgcc', 'xcb-proto', 'gettext-minimal-native', 'm4-native']
  • | DEBUG: Python function extend_recipe_sysroot finished
  • | DEBUG: Executing shell function do_configure
  • | rm -f config.mk
  • | make config.mk
  • | make[1]: Entering directory '/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/git'
  • | make -f Makefile.config
  • | make[2]: Entering directory '/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/git'
  • | ABI="armhf" (Provided)
  • | VERSION="r3p0" (Provided)
  • | EGL_TYPE="x11" (Detected)
  • | make[2]: Leaving directory '/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/git'
  • | Makefile.config:87: *** No Mali libs exist for r3p0, armhf, x11. Stop.
  • | make[1]: *** [Makefile:12: config.mk] Error 2
  • | make[1]: Leaving directory '/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/git'
  • | make: *** [Makefile:9: config] Error 2
  • | WARNING: exit code 2 from a shell command.
  • ERROR: Task (/home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/libgles/sunxi-mali_git.bb:do_configure) failed with exit code '1'
  • NOTE: Tasks Summary: Attempted 3390 tasks of which 3385 didn't need to be rerun and 1 failed.

  • Summary: 1 task failed:
  •   /home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/libgles/sunxi-mali_git.bb:do_configure


なにやらライブラリが足りない!とか言っているようですね。

ソースやらライブラリが足りないというエラーの場合は、それらをGitからダウンロードするのに失敗しているケースが大半です。

エラーを起こした「sunxi-mali_git.bb」というレシピを調べてみましょう。

因みに「sunxi-mali」とは「pcDuino3」に搭載されているプロセッサ「Allwinner A20」用のグラフィック・モジュールです。

今回の絵を出すディストリビューションを作るミッションにおいては主役ですね。


/home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/libgles/sunxi-mali_git.bb

ファイル・ブラウザ - 2


ここでは「SRC_URI = 」から始まる行に注目します。

この「SRC_URI 」は、ソースやライブラリのダウンロード先を示す変数のようです。

  • DESCRIPTION = "libGLES for the A10/A13 Allwinner processor with Mali 400 (X11)"

  • LICENSE = "Proprietary"
  • LIC_FILES_CHKSUM = "file://README;md5=1b81a178e80ee888ee4571772699ab2c"

  • COMPATIBLE_MACHINE = "(sun4i|sun5i|sun7i|sun8i)"

  • # These libraries shouldn't get installed in world builds unless something
  • # explicitly depends upon them.
  • EXCLUDE_FROM_WORLD = "1"
  • PROVIDES = "virtual/libgles1 virtual/libgles2 virtual/egl"

  • # There's only hardfp version available
  • python __anonymous() {
  •     tunes = d.getVar("TUNE_FEATURES", True)
  •     if not tunes:
  •         return
  •     if "callconvention-hard" not in tunes:
  •         pkgn = d.getVar("PN", True)
  •         pkgv = d.getVar("PV", True)
  •         raise bb.parse.SkipPackage("%s-%s ONLY supports hardfp mode for now" % (pkgn, pkgv))
  • }

  • SRCREV = "d343311efc8db166d8371b28494f0f27b6a58724"
  • SRC_URI = "git://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali.git;protocol=https;branch=master \
  •            file://0001-Add-EGLSyncKHR-EGLTimeKHR-and-GLChar-definition.patch \
  •            file://0002-Add-missing-GLchar-definition.patch \
  •            file://0003-Fix-sed-to-replace-by-the-correct-var.patch \
  •            file://0001-fix-test-build.patch \
  •            "

  • S = "${WORKDIR}/git"

  • DEPENDS = "libdrm xorgproto libump patchelf-native"
  • ...


もし「SRC_URI 」の内容が正しければ、今回のエラーは起こらないはずなんですけどねぇ。

この変数の先頭のアイテム「git://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali.git;protocol=https;branch=master」をWebで見てみましょう。


https://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali/tree/master/lib


ライブラリが足らないということなので、この中の「lib」のディレクトリを覗いてみましょう。

すると、ここには「mali @ 1c5063f」とかいうディレクトリが含まれていて、それがどうやらサブモジュール扱いになっているようです。

Github - 1


サブモジュールというのは、リポジトリの中で他のリポジトリにリンクするモジュールを意味します。

その証拠、この「mali @ 1c5063f」ディレクトリをクリックすると「sunxi-mali-proprietary」という別のリポジトリに飛ばされます。

これこそが足りないと騒ぎになっているライブラリのソースでは?

Github - 2


試しにダウンロードされた現物を見てみましょう。

「Yocto Peoject」ではbitbake中にダウンロードし、展開されたソースは(デフォルトでは)「/home/yocto/poky/build/tmp/work/」以下のディレクトリに置かれることになっています。

そこで「sunxi-mali」のリポジトリ通りにダウンロード・展開されているかを確認します。

サブモジュール「mali @ 1c5063f」が正しく存在するか?を調べるために以下のディレクトリにアクセスすると…やっぱり何もないじゃん!?


/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/git/lib/mali

ファイル・ブラウザ - 3


サブモジュール「mali @ 1c5063f」がここに展開されていない…つまりは、正しくダウンロードできていないことが分かりました。

もう一度、以下の「sunxi-mali_git.bb」を見てみましょう。


/home/yocto/poky/meta-sunxi/recipes-graphics/libgles/sunxi-mali_git.bb


「SRC_URI 」の先頭アイテムとして…


git://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali.git;protocol=https;branch=master


…が記述されていましたが、コレがダメなんでしょう。

  • DESCRIPTION = "libGLES for the A10/A13 Allwinner processor with Mali 400 (X11)"

  • LICENSE = "Proprietary"
  • LIC_FILES_CHKSUM = "file://README;md5=1b81a178e80ee888ee4571772699ab2c"

  • COMPATIBLE_MACHINE = "(sun4i|sun5i|sun7i|sun8i)"

  • # These libraries shouldn't get installed in world builds unless something
  • # explicitly depends upon them.
  • EXCLUDE_FROM_WORLD = "1"
  • PROVIDES = "virtual/libgles1 virtual/libgles2 virtual/egl"

  • # There's only hardfp version available
  • python __anonymous() {
  •     tunes = d.getVar("TUNE_FEATURES", True)
  •     if not tunes:
  •         return
  •     if "callconvention-hard" not in tunes:
  •         pkgn = d.getVar("PN", True)
  •         pkgv = d.getVar("PV", True)
  •         raise bb.parse.SkipPackage("%s-%s ONLY supports hardfp mode for now" % (pkgn, pkgv))
  • }

  • SRCREV = "d343311efc8db166d8371b28494f0f27b6a58724"
  • SRC_URI = "git://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali.git;protocol=https;branch=master \
  •            file://0001-Add-EGLSyncKHR-EGLTimeKHR-and-GLChar-definition.patch \
  •            file://0002-Add-missing-GLchar-definition.patch \
  •            file://0003-Fix-sed-to-replace-by-the-correct-var.patch \
  •            file://0001-fix-test-build.patch \
  •            "

  • S = "${WORKDIR}/git"

  • DEPENDS = "libdrm xorgproto libump patchelf-native"
  • ...


「git://~」と記述した場合は、サブモジュールまではダウンロードしてくれないようです。

サブモジュールまでゲットしたい場合は「gitsm://~」と書くのが正解のようです。

つまり…


gitsm://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali.git;protocol=https;branch=master


…が正解?

したがって「sunxi-mali_git.bb」を以下のように修正してみましょう。

「SRC_URI = 」から始まる行です。

  • DESCRIPTION = "libGLES for the A10/A13 Allwinner processor with Mali 400 (X11)"

  • LICENSE = "Proprietary"
  • LIC_FILES_CHKSUM = "file://README;md5=1b81a178e80ee888ee4571772699ab2c"

  • COMPATIBLE_MACHINE = "(sun4i|sun5i|sun7i|sun8i)"

  • # These libraries shouldn't get installed in world builds unless something
  • # explicitly depends upon them.
  • EXCLUDE_FROM_WORLD = "1"
  • PROVIDES = "virtual/libgles1 virtual/libgles2 virtual/egl"

  • # There's only hardfp version available
  • python __anonymous() {
  •     tunes = d.getVar("TUNE_FEATURES", True)
  •     if not tunes:
  •         return
  •     if "callconvention-hard" not in tunes:
  •         pkgn = d.getVar("PN", True)
  •         pkgv = d.getVar("PV", True)
  •         raise bb.parse.SkipPackage("%s-%s ONLY supports hardfp mode for now" % (pkgn, pkgv))
  • }

  • SRCREV = "d343311efc8db166d8371b28494f0f27b6a58724"
  • SRC_URI = "gitsm://github.com/linux-sunxi/sunxi-mali.git;protocol=https;branch=master \
  •            file://0001-Add-EGLSyncKHR-EGLTimeKHR-and-GLChar-definition.patch \
  •            file://0002-Add-missing-GLchar-definition.patch \
  •            file://0003-Fix-sed-to-replace-by-the-correct-var.patch \
  •            file://0001-fix-test-build.patch \
  •            "

  • S = "${WORKDIR}/git"

  • DEPENDS = "libdrm xorgproto libump patchelf-native"
  • ...


では修正した「sunxi-mali_git.bb」を保存して、再度bitbakeです。

但し「core-image-sato」全体ではなくて、今回は時短のために「sunxi-mali」単体でbitbakeしてみましょう。

このように、レシピを単体でbitbakeすることもできます。


$ bitbake sunxi-mali

ターミナル - 4

今回は大丈夫かな?

ターミナル - 5

以下表示になれば、とりあえず「sunxi-mali」に関しては正しくbitbakeできています。

ターミナル - 6

さきほどの「sunxi-mali」のサブモジュール、今回は正しく生成できているでしょうか?

まあ、できているのでbitbakeが通ったんですけどね。

一応確認です。

再度、以下のディレクトリを確認しましょう。

今回はちゃんとできています!

Webで見た「sunxi-mali-proprietary」というサブモジュールがそのまま展開されています。


/home/yocto/poky/build/tmp/work/cortexa7t2hf-neon-poky-linux-gnueabi/sunxi-mali/git-r0/git/lib/mali

ファイル・ブラウザ - 4

ヨシ!

なんだ、今までの苦労って全部「meta-sunxi」のバグじゃん!?

思われる気持ちも分かります。

しかし、この程度の障害はオープンソース・ソフトウェアでは付きものです。

メンテナーさんを責めてはいけません。

善意でやってくださっているのだから。

さて、満を持して「core-image-sato」をbitbakeです!


$ bitbake core-image-sato

ターミナル - 7


すでに以前の経験からお分かりだと思いますが、終わるまでに凄い時間が掛かります。

就寝前にbitbakeを仕掛けるのが良いでしょう。

というわけで、今日の作業は終了です。

明日の朝起きれば「core-image-sato」のbitbakeが無事に終了して「pcDuino3」が美麗なグラフィックを表示するだろうと楽しみに眠りに就く私。

しかし、これは新たなる苦悩の序章であるとは知る由もなかった…。


…てなわけで、長くなっちゃうので一回切ります。

今回わざわざ試行錯誤の過程を書いたのは「Yocto Project」でのディストリビューション開発の苦悩と現実を理解いただくためです。

そう、意外に難しいんですよ!「Yocto Project」って。


<続く>

2024年8月18日日曜日

BSD 2-Clause License

OSSライセンスのメインページはこちらからどうぞ。

ライセンスの目次はこちらです。


名称:「二条項BSDライセンス」(BSD-2-clause)


BSDライセンス・ロゴ


タイプ:

・コピーレフト…×

・ライセンス文の掲示…〇

・コピーライト(著作権)の掲示…〇

・その他…×


原文:


  • Copyright (c) <year>, <copyright holder>
  • All rights reserved.

  • Redistribution and use in source and binary forms, with or without
  • modification, are permitted provided that the following conditions are met:
  • 1. Redistributions of source code must retain the above copyright notice,
  •    this list of conditions and the following disclaimer.
  • 2. Redistributions in binary form must reproduce the above copyright notice,
  •    this list of conditions and the following disclaimer in the documentation
  •    and/or other materials provided with the distribution.

  • THIS SOFTWARE IS PROVIDED BY <COPYRIGHT HOLDER> ''AS IS'' AND ANY
  • EXPRESS OR IMPLIED WARRANTIES, INCLUDING, BUT NOT LIMITED TO, THE IMPLIED
  • WARRANTIES OF MERCHANTABILITY AND FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE ARE
  • DISCLAIMED. IN NO EVENT SHALL <COPYRIGHT HOLDER> BE LIABLE FOR ANY
  • DIRECT, INDIRECT, INCIDENTAL, SPECIAL, EXEMPLARY, OR CONSEQUENTIAL DAMAGES
  • (INCLUDING, BUT NOT LIMITED TO, PROCUREMENT OF SUBSTITUTE GOODS OR SERVICES;
  • LOSS OF USE, DATA, OR PROFITS; OR BUSINESS INTERRUPTION) HOWEVER CAUSED AND
  • ON ANY THEORY OF LIABILITY, WHETHER IN CONTRACT, STRICT LIABILITY, OR TORT
  • (INCLUDING NEGLIGENCE OR OTHERWISE) ARISING IN ANY WAY OUT OF THE USE OF THIS
  • SOFTWARE, EVEN IF ADVISED OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGE.


日本語訳:


  • Copyright (c) <年>, <著作権所有者>
  • All rights reserved.

  • 以下の条件が満たされる場合、修正の有無にかかわらず、
  • ソースおよびバイナリ形式での再配布および使用が許可されます:
  • 1. ソース コードを再頒布する場合は、上記の著作権表示、このライセンス文、
  •    および下に記述する免責事項を保持する必要があります。
  • 2. バイナリ形式で再頒布する場合は、上記の著作権表示、このライセンス文、
  •    および下に記述する免責事項を、頒布物とともに提供されるドキュメントおよび/または
  •    その他の資料に転載する必要があります。

  • このソフトウェアは、<著作権所有者>によって「ありのまま」で提供され、
  • 明示的か黙示的かを問わず、商品性および特定目的への適合性の暗黙の保証を含む、
  • またそれらに限定されない、いかなる保証もしません。
  • いかなる場合も<著作権所有者>は契約に沿った行為か否かを問わず、
  • 損害発生の原因如何を問わず、
  • かつ責任の根拠が契約か厳格責任か(過失その他の)不法行為か否かを問わず、
  • 仮にそのような損害が発生する可能性を知らされていたとしても、本ソフトウェアの使用によって発生した
  • (代替品または代用サービスの調達、使用の喪失、データの喪失、利益の喪失、業務の中断も含む、またそれらに限定されない)
  • 直接損害、間接損害、偶発的な損害、特別損害、懲罰的損害、または結果損害について、
  • 一切責任を負わないものとします。


解説:

BSDライセンスと呼ばれるものは、コピーレフトではないオープンソース・ライセンスの中では最もメジャーなライセンスです。

これにはいくつかの種類がありますが、この「二条項BSDライセンス」はその中でも非常に寛大な(緩い)ライセンスです。

ライセンスの内容は、要するに、著作権表示とライセンス文さえ掲示してくれれば改変だろうが商用だろうが自由にやってください、でも<著作権所有者>は一切責任は取りませんよ~というものです。

制約的にはMITやISCライセンスと異なるところはなく、少々回りくどい言い方をしているだけの違いです。

これよりも一段階だけ厳しい「三条項BSDライセンス」との違いは「 <著作権者>の名前もその貢献者の名前も、書面による事前の特別な許可がない限り、このソフトウェアから派生した製品を広報または宣伝するために使用することはできない」という条文が削除されている点のみです。


適用例:

「三条項BSDライセンス」と同様、非常に数多くのソフトウェアに適用されています。


頒布のために執るべき行動:


ソースコード頒布の場合:

ライセンス条文1により、ソースコードの改変の有無に関わらず、冒頭に記述されるこのライセンス文をそのまま改変することなく配布しましょう。

また同条文によるコピーライト(著作権)は、上記を守ることによって自動的に条件が満たされます。


バイナリ頒布の場合:

ライセンス条文2により、このライセンス文を掲示する必要があります。

また同条文により、ライセンス文の先頭に記述されているコピーライト(著作権)を掲示する必要があります。

これらの掲示は、このライセンスのソフトウェアを含む製品の取扱説明書やWebページなど、必ず容易にユーザーの目に触れる形で記述しましょう。


その他:

特になし。

2024年8月11日日曜日

ISC License

OSSライセンスのメインページはこちらからどうぞ。

ライセンスの目次はこちらです。


 名称:「ISCライセンス」


ISC logo


タイプ:

・コピーレフト…×

・ライセンス文の掲示…〇

・コピーライト(著作権)…〇

・その他…×


原文:


  • Copyright (c) <year>, <copyright holder>
  • .
  • Permission to use, copy, modify, and distribute this software for any
  • purpose with or without fee is hereby granted, provided that the above
  • copyright notice and this permission notice appear in all copies.
  • .
  • THE SOFTWARE IS PROVIDED "AS IS" AND ISC DISCLAIMS ALL WARRANTIES
  • WITH REGARD TO THIS SOFTWARE INCLUDING ALL IMPLIED WARRANTIES OF
  • MERCHANTABILITY AND FITNESS. IN NO EVENT SHALL ISC BE LIABLE FOR
  • ANY SPECIAL, DIRECT, INDIRECT, OR CONSEQUENTIAL DAMAGES OR ANY DAMAGES
  • WHATSOEVER RESULTING FROM LOSS OF USE, DATA OR PROFITS, WHETHER IN AN
  • ACTION OF CONTRACT, NEGLIGENCE OR OTHER TORTIOUS ACTION, ARISING OUT
  • OF OR IN CONNECTION WITH THE USE OR PERFORMANCE OF THIS SOFTWARE.


日本語訳:


  • Copyright (c) <年>, <著作権所有者>
  • .
  • 本ソフトウェアを使用、複製、改変、及び/または頒布する権利は、いかなる目的においても
  • 有償・無償を問わず、本許諾によって付与されます。
  • ただし、上記の著作権表示及びこのライセンス文が全ての複製物に記載されていることを条件とします。
  • .
  • 本ソフトウェアは「ありのまま」で提供され、
  • <著作権所有者>は、販売可能性及び適合性に関するあらゆる暗示的保証を含む、
  • 本ソフトウェアに関する全ての保証を放棄するものとします。
  • いかなる場合も、契約に沿った行為の如何を問わず、
  • 過失またはその他の不法行為であるかにかかわらず、
  • 本ソフトウェアの使用または操作が原因で発生した使用不能損失、
  • データまたは利益の損失に起因するあらゆる特別、直接的、間接的、
  • または派生的な損害について著作者は一切の責任を負いません。


解説:

1995年という大昔にISC(Internet Systems Consortium)というNPO法人が策定したライセンスです。

基本的に、BSDライセンスの中でも「二条項BSDライセンス」と呼ばれるものと内容は同一であり、ライセンス条文の文言をシンプルにしただけと捉えることができます。

ライセンスの内容は、要するに、著作権表示とライセンス文さえ掲示してくれれば改変だろうが商用だろうが自由にやってください、でも<著作権所有者>は一切責任は取りませんよ~というものです。

このような寛容なライセンスの類としては、BSD、MITなどのライセンスと並び最もメジャーなものの一つであり、古いライセンスにも関わらず現在でもよく見かけます。


適用例:

そもそもISCがこのライセンスを策定する切っ掛けとなった「bind」や「dhcp」など、更には「git」などの比較的新しいソフトウェアまで、広く適用されています。


頒布のために執るべき行動:


ソースコード頒布の場合:

ソースコードの改変の有無に関わらず、冒頭に記述されるこのライセンス文をそのまま改変することなく配布しましょう。

また同条文によるコピーライト(著作権)は、上記を守ることによって自動的に条件が満たされます。


バイナリ頒布の場合:

このライセンス文を掲示する必要があります。

また同条文により、ライセンス文の先頭に記述されているコピーライト(著作権)を掲示する必要があります。

これらの掲示は、このライセンスのソフトウェアを含む製品の取扱説明書やWebページなど、必ず容易にユーザーの目に触れる形で記述しましょう。


その他:

特になし。

2024年6月30日日曜日

TOPPERS/ASP - Arduino UNO R4版 その8

前回からの続きです。

このテーマを最初からご覧になる場合はこちらからどうぞ。


「e2 Studio」で普通にFSPを使う

さて、これまでにも何回か言及している通り、この「TOPPERS/ASP Arduinp UNO R4版」を使った「Arduino」は、もはやArduinoではありません。

便利な「Arduino IDE」も使えませんし、豊富なArduino用のライブラリも使えません。

つまり、安価なRenesas RAマイコン評価ボードになってしまったとも言えます。

しかし、単にライブラリという意味では「Arduino IDE」ではなく「e2 studio」を使用した開発でもFSP(Flexible Software Package)が使用できます。

このFSPについては、過去記事を参照してください。

FSPをうまく利用すれば、Arduino用のライブラリとまでは言えませんが、RAマイコンの持つ色々な機能をライブラリとして利用したソフトウェアを楽に開発できます。

いきなり「TOPPERS/ASP Arduinp UNO R4版」上でFSPを使うのは少々ハードルが高いです。

ですので、今回は、OSレスでフツーにFSPを使用する方法をご紹介します。

そのためには、以前作成した「Hinagata」プロジェクトを「e2 studio」で開きます。

んなもんとっくに消しちゃったよ~って方は、コチラを参考に再度作成してください。

「e2 studio」 - 1


今回は、この「Hinagata」プロジェクトでFSPを使用して、シリアル通信ポートを使えるようにライブラリを追加しましょう。

どのピンにシリアルポートを割り当てましょうか?

シリアル通信には、TXD(送信)、RXD(受信)、GNDの計3本の線が必要です。

GNDは適当で良いとして…、TXD(送信)、RXD(受信)は、以下の回路図のピンを使用することにしましょう!

回路図


絵にすると、以下の通りです。

Arduino UNO R4


これで…

SCI2」というシリアルポートの送信(TXD)信号を「P302」というポートに

SCI2」というシリアルポートの受信(RXD)信号を「P301」というポートに、それぞれ設定すれば良いことが分かります。

これを「e2 studio」で「Hinagata」プロジェクトに設定すればよいのですが、マイコンのピンを機能に割り付ける作業は、実は以前の記事で行っています。

その時に、今回使用する「P302」も「P301」も「SCI2」というシリアルポートで使用できるように既に設定されています。

したがって、残りの作業はシリアル通信のライブラリを設定することだけです!

「e2 studio」の左側の「プロジェクト・エクスプローラー」で「Hinagata」プロジェクト以下に「configuration.xml」というファイルがありますので、これをダブルクリックしてください。

すると、画面中央には「[Hinagata]FSP Configuration」というタブが追加されると思います。

「e2 studio」 - 2

次に、開いた「[Hinagata]FSP Configuration」タブの下にもいくつかのタブがありますので、この中から「Stacks」というタブをクリックします。

以下のように、なにやら「HAL Common Stacks」と題された表示に切り替わります。

「e2 studio」 - 3


この画面で必要なスタック…ライブラリとかドライバを追加していきます。

今回はシリアル通信、すなわちUARTのスタックを追加すれば良いわけですね。

HAL Common Stacks」という表示の右側に「New Stack >」というボタンがありますので、これをクリックするとメニューが表示されます。

メニューの中から「Connectivity」を、更に展開されるメニューで今回のお目当てである「UART(r_sci_uart)」を順にクリックします。

「e2 studio」 - 4


すると、以下のように「HAL Common Stacks」の表示が切り替わり、UARTスタックが追加されたことが分かります。

追加されたUARTスタックですが、デフォルトのままでは都合が悪いので、プロパティをいじらないとなりません。

それには「[Hinagata]FSP Configuration」タブの下のビューの中の「プロパティー」タブをクリックします。

「e2 studio」 - 5


以下は、分かりやすいように拡大した「プロパティー」タブです。

ここには、追加されたUARTスタックの各種設定が表示されています。

これらの中から以下の項目を変更します。

前述した通り、今回は「SCI2」というシリアルポートを使用したいので、それに沿った変更を行います。


Name:g_uart2

Channel:2

Callback:uart2_callback

「e2 studio」 - 6


次に、以下の項目を確認しておきます。

ボーレートが115200bpsに設定されていることは、覚えておきましょう。

また、こちらも前述の通り、送信(TXD_MOSI)信号が「P302」というポートに、受信(RXD_MISO)信号が「P301」というポートに、それぞれ設定されていることを確認します。


Baud Rate:115200

TXD_MOSI:P302

RXD_MISO:P301

「e2 studio」 - 7


オッケー。

じゃあ、この状態でUARTスタックを追加した新しい「Hinagata」プロジェクトのソースコードを出力しましょう。

メインビューの「[Hinagata]FSP Configuration」タブの右上にある「Generate Project Content」ボタンをクリックします。

「e2 studio」 - 8


こんなポップアップが出たら「続行」ボタンをクリックで。

そういや、UARTスタックの追加とかプロパティの変更とか、保存してなかったや…。

「Generate Project Content」ポップアップ


処理が終わると、UARTスタックが追加された「Hinagata」プロジェクトが出来上がっているはずです。

試しに画面左側の「プロジェクト・エクスプローラー」で「ra_gen」ディレクトリ以下の「hal_data.c」をダブルクリックして、ソースコードを見てみましょう。

ソースコードの中にUARTスタックのプロパティで設定した「g_uart2」という文字列がいくつか確認できますね?

「e2 studio」 - 9


更に、新しい「Hinagata」プロジェクトのソースツリーの中には「uart」と記述されたソースコードやヘッダファイルがいくつも見つかります。

これらが追加されたUARTスタックの本体です。

「e2 studio」 - 10


さて、UARTスタックを手に入れた新しい「Hinagata」プロジェクトですが、これをビルドして動かしても何も起こりません。

UARTスタックを使う…すなわちシリアル通信を行うアプリケーションを実装しないと本当に正しく動くのか分かりませんよね?

というわけで、簡単なプログラムを実装して動作確認をしてみましょう。

プログラムを記述するのは「src」ディレクトリ以下の「hal_entry.c」です。

さっそく開いてみましょう。

「e2 studio」 - 11


この「hal_entry.c」ファイルに、以下のように「received」というフラグと「uart2_callback()」という関数を記述します。

  1. #include "hal_data.h"
  2. FSP_CPP_HEADER
  3. void R_BSP_WarmStart(bsp_warm_start_event_t event);
  4. FSP_CPP_FOOTER
  5. // ここから ----------------------------------------------------------------
  6. volatile bool recieved = false; // 受信完了フラグ
  7. void uart2_callback(uart_callback_args_t *p_args)
  8. {
  9.     if (p_args->event == UART_EVENT_RX_COMPLETE) {
  10.         // 受信が完了したら「r_sci_usrt.c」ファイルの
  11.         // 「sci_uart_rxi_isr()」割り込みハンドラからここに来る
  12.         recieved = true;
  13.     }
  14.     if (p_args->event == UART_EVENT_TX_COMPLETE) {
  15.         // 送信が完了したら「r_sci_usrt.c」ファイルの
  16.         // 「sci_uart_tei_isr()」割り込みハンドラからここに来る
  17.     }
  18.     if (p_args->event == UART_EVENT_RX_CHAR) {
  19.         // 一文字受信したら「r_sci_usrt.c」ファイルの
  20.         // 「sci_uart_rxi_isr()」割り込みハンドラからここに来る
  21.     }
  22.     if (p_args->event == UART_EVENT_ERR_FRAMING) {
  23.         // フレーミングエラーを検出した時に「r_sci_usrt.c」ファイルの
  24.         // 「sci_uart_eri_isr()」割り込みハンドラからここに来る
  25.     }
  26.     if (p_args->event == UART_EVENT_BREAK_DETECT) {
  27.         // ブレークを検出した時に「r_sci_usrt.c」ファイルの
  28.         // 「sci_uart_eri_isr()」割り込みハンドラからここに来る
  29.     }
  30.     if (p_args->event == UART_EVENT_TX_DATA_EMPTY) {
  31.         // 送信バッファが空になった時に「r_sci_usrt.c」ファイルの
  32.         // 「sci_uart_txi_isr()」割り込みハンドラからここに来る
  33.     }
  34. }
  35. // ここまで ----------------------------------------------------------------
  36. /*******************************************************************************************************************//**
  37.  * main() is generated by the RA Configuration editor and is used to generate threads if an RTOS is used. This function
  38.  * is called by main() when no RTOS is used.
  39.  **********************************************************************************************************************/
  40. void hal_entry(void)
  41. ...


お次は、その下の「hal_entry()」内に以下のコードを加えます。

  1. /*******************************************************************************************************************//**
  2.  * main() is generated by the RA Configuration editor and is used to generate threads if an RTOS is used. This function
  3.  * is called by main() when no RTOS is used.
  4.  **********************************************************************************************************************/
  5. void hal_entry(void)
  6. {
  7.     /* TODO: add your own code here */
  8.     // ここから ----------------------------------------------------------------
  9.     uint8_t c;
  10.     // シリアル通信を開く
  11.     R_SCI_UART_Open(&g_uart2_ctrl, &g_uart2_cfg);
  12.     while (1) {
  13.         // 受信する
  14.         R_SCI_UART_Read(&g_uart2_ctrl, &c, 1);
  15.         // 受信するまで待つ
  16.         while (!recieved);
  17.         // 受信完了フラグをリセットする
  18.         recieved = false;
  19.         // 受信した一文字を送信する
  20.         R_SCI_UART_Write(&g_uart2_ctrl, &c, 1);
  21.     }
  22.     // ここまで ----------------------------------------------------------------
  23. #if BSP_TZ_SECURE_BUILD
  24.     /* Enter non-secure code */
  25.     R_BSP_NonSecureEnter();
  26. #endif
  27. }


なにをやっているのか?…というのは、まあ、コメントに書いた通りなのですが。

まず、追加した「uart2_callback()」というのは、コールバック関数というもので、チャンネル2のシリアルポートに割り込みが発生した場合に処理が飛んでくる関数です。

「uart2_callback」という名称については、UARTスタックを追加した時「callback」プロパティで設定しましたよね?

で、割り込みが発生して「uart2_callback()」関数が飛んできて、その中で「p_args->event」変数の内容を調べて、それが受信完了割り込み…すなわち「UART_EVENT_RX_COMPLETE」というフラグを含んでいた場合は、冒頭で定義した「received」変数を「true」にする…という処理をしています。

割り込みには受信完了のほか、送信完了やエラー発生など、色々なものがあります。

上記の例では、ご丁寧に受信完了以外の条件分岐も記述されていますが、何も実装していないし、今回は受信完了割り込みしか使わないので、面倒だったらそれ以外のif文は省いてオッケーです。


さて、次に「hal_entry()」です。

これは、最初から実装されている関数です。

C言語のプログラムは、一般的に「main()」という関数から処理が始まります。

しかしながらFSPでは、その役割は「hal_entry()」が担っています。

とはいえ、これはFSPのお作法というか…実際「Hinagata」プロジェクトのソースツリーの中にも「main.c」ファイルが存在し、その中に「main()」関数も記述されています。

この「main()」は開始早々この「hal_entry()」を呼んでいるので「hal_entry()」は、実質「main()」と同じですね。

(こんな回りくどい実装をしているのは「main()」を直接いじれなくなるRTOSを使う場合を想定している旨が、関数の上のコメントに書いてありますね。)

追記した部分ですが「c」という変数を定義した後に「R_SCI_UART_Open()」という関数を呼んでいます。

これでUARTスタック、すなわちシリアルポートを使用する準備をします。

その後、whileループに入ります。

ループの冒頭で「R_SCI_UART_Read()」という関数を呼んでいます。

これは、シリアル通信の受信を行う関数です。

この関数は、受信が終わるまでロックする…ということもなく、素通りします。

受信ができたらその時点で、受信データは関数に渡した「c」のポインタに格納される仕組みとなっています。

さっきから頭に「R_SCI_UART_うんちゃら」という名前の関数が出てきていますが、これこそが今回追加したUARTスタックで提供されている関数です。

これらの関数は、今回使用するものの他にも多く用意されています。

詳しくは、こちらを御覧ください。

さて「R_SCI_UART_Read()」で受信を指示した後は、更にループに入ります。

このループは「received」が「true」にならない限り、ここでずっとグルグル回っているという処理、すなわち無限ループになります。

「received」の初期値は「false」ですから、最初は必ずグルグル回ります。

その間に受信完了割り込みが起きて、前述の「uart2_callback()」の中で「received」が「true」に変化したら、ようやくこの無限ループから次に進むことができます。

このループ、要はシリアル通信の受信待ちです。

ループを抜けると、次の受信に備えて「received」を「false」に戻しておきます。

この時には既に「c」の中には受信した1文字のデータが格納されているはずです。

次の「R_SCI_UART_Write()」関数で、その受信した「c」の中の1文字のデータを今度はそのまま送信します。

送信後は、また受信処理に戻り、それを永遠に繰り返します。

すなわち今回のアプリケーションは、シリアル通信で1文字受信すると、それと同じ1文字を送信する…というテストプログラムになります。


さて、思惑通りに動くかな?

物理的な接続です!

まずは、Arduinoとデバッガーとパソコンを接続します。

このページを参考にして欲しいのですが、唯一違うのがシリアル通信部分。

今回は変換ケーブルから出ている信号線ではなくて、Arduinoのピンソケットから取りましょう。

ピンソケットの位置は、今一度、このページの冒頭の図を参考に。

GNDSCI_TXD2およびSCI_RXD2の3本ですね。

こんな感じ。

物理的接続


USB/シリアル通信変換ケーブル側の配線は、上からTXDRXDGNDの順番でこんな感じです。

USB/シリアル通信変換ケーブル側の配線


これで「Hinagata」プロジェクトを走らせましょう。

まずは「プロジェクト・エクスプローラー」で「Hinagata」プロジェクトを右クリック、出てきたメニューから「プロジェクトのビルド」を左クリックしてください。

「e2 studio」 - 12

ビルドが終わったら、再び「プロジェクト・エクスプローラー」で「Hinagata」プロジェクトを右クリック、出てきたメニューから、今度は「デバッグ」を左クリック、更に表示されたメニューから「Renesas GDB Hardware Debugging」を左クリックします。

「e2 studio」 - 13


以下のダイアログが表示されたら「E2 Lite (ARM)」を選択状態にして、ダイアログ下部の「OK」ボタンをクリック。

「Renesas Hardware Debugging」ダイアログ - 1


再度、以下のダイアログが表示されたら「R7FA4M1AB」を選択状態にして、ダイアログ下部の「OK」ボタンをクリックです。

「Renesas Hardware Debugging」ダイアログ - 2


これでオッk…ああ!?

まあ、とりあえず「OK」ボタンをクリックで。

致命的なエラー


これを修正するには、このページの中盤くらいにある「エミュレーターから電源供給」の項目を「いいえ」に設定する必要があるようです。

デバッグの構成は「Hinagata.elf」という名前で、この時点で作成されています。

設定できたら「デバッグ」ボタンをクリックして、デバッグ開始です!

デバッグの構成


デバッグが開始されると、いくつかのポイントで自動的にブレークがかかります(2回くらいだっけか?)。

ブレークがかからなくなるまで「」ボタンをクリックしてプログラムを続行させましょう。

次に「TeraTerm」の起動です。

今回は、UARTスタックのプロパティで115200に設定したのですよね?

TeraTerm - 1


接続ができたら「TeraTerm」の画面でキーボードから何か文字を入力してみてください。

このように、入力した文字が「TeraTerm」にそのまま表示されれば動作確認は完了です!

TeraTerm - 2


「Hinagata」プロジェクトに無事UARTスタックが追加され、それが正常に動いていることが確認できました。

今回はUARTスタック、すなわちシリアル通信のライブラリを追加しましたが、I2CやSPIなどの他の通信の場合でも、FSPの使い勝手は概ね一緒です。

更には、AD変換やタイマーなど、FSPを使えばデバイスドライバを作成することなく簡単にこれらの機能をファームウェアで使用することが可能です。

便利な時代になりましたね~。


さて、今回はTOPPERS/ASPとは関係なく、フツーにFSPを使うだけの記事となってしまいました。

次回は、今回と同じプログラムを「TOPPERS/ASP Arduino UNO R4版」で動かす例を紹介します。

便利なFSPとTOPPERS/ASPを組み合わせて使うことができますよ!

あとは、今回のプログラムは受信待ちに「received」をフラグに無限ループを使うという、ある意味でダサい実装となってしまいました。

それがTOPPERS/ASPなどのRTOSを使用することで、どれだけスマートな実装になるのかも説明させていただきます。


…なにげに前回の投稿から2ヶ月も経っていたのですね。

ブログを書くのも趣味の一つなのですが、本業が忙しくてそれができないようだと、ライフワークバランスが崩壊しているなぁ~…と思います。

ライフのためのワークであって、ワークのためのライフでは本末転倒だと思う今日このごろです。


<続く>

Simplicity Studioを使ってみた! その3

前回からの続き です。 このテーマを最初からご覧になる場合は こちら からどうぞ。 「Simplicity Studio」でプログラミング インストールしたSilicon Labs社のマイコン用の統合開発環境「 Simplicity Studio 」で、テストプログラムを動かして...